成ヶ島の記事

(2011:12:11 09:02:57, NIKON D3100, F8.0, 1/250, 0, ISO:400, 16 mm(換算24 mm), 16.0-85 mm f/3.5-5.6, 撮影地, 潮位, 月齢:15.9, 大潮)
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201112淡路島
成ヶ島の地理的特徴
成ヶ島は大阪湾の入り口に位置する淡路島東端の小島です。地形は、北側の成山(標高約50メートル)と南側の高崎を結ぶ約3kmの砂州によって形成され、由良瀬戸側は外洋性の砂礫海岸、由良湾側は潟干潟からなる自然海岸です。また、島の中央部には塩沼湿地が存在します。
成山山上の展望台からの眺望はすばらしくく、かつて「淡路橋立」と呼ばれた成ヶ島を一望できます。
成ヶ島の生態的特徴
成ヶ島は、「大阪湾の宝島」と呼ばれていますが、その理由は豊かな植物相と豊富な海岸動物にあります。最近の調査によれば、植物はハマボウ、ハママツナ、ハマウツボなどに代表される貴重な海浜・海岸植物を主として約300種類の植物が自生しています。また、由良湾内には大阪湾では数少ない「アマモ」の繁茂が見られます。
海岸動物相も豊かで、ハクセンシオマネキ、アカテガニ、ハマガニなどのカニ類や、アサリ、サクラガイなどをはじめとする約500種類の貝類が確認され、絶滅危惧種に指定されている貝も多く生息しています。また、初夏には由良瀬戸側の海岸でアカウミガメの産卵も見られ、夏の夜には浅瀬でアカテガニの誕生も観察できます。
由良湾・成ヶ島の大きさ
成ヶ島 面積25ha、長さ3km
由良湾 面積120ha、深さ10m
ハママツナ
ハマヒルガオ
アマモ
スナガニ
アカウミガメの子供
環境省

(2011:12:11 09:03:01, NIKON D3100, F9.0, 1/320, 0, ISO:400, 16 mm(換算24 mm), 16.0-85 mm f/3.5-5.6, 撮影地, 潮位, 月齢:15.9, 大潮)
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201112淡路島
成山の植生
成山は約50種類の広葉樹で覆われています。そのうち、約30種は常緑樹、約20種は落葉樹です。成山北側・東側の断崖地には、海岸岩上特有の崖地植生が見られます。
成山の照葉樹林帯
高木層(15メートル以上)
スダジイ、クヌギ、ホルトノキ、クロガネモチ、モチノキ、ヤブニッケイ、タブノキ、クマノミズキ、クスノキ
亜高木層(5~15メートル以上)
ウバメガシ、モッコク、エノキ、ハゼノキ
低木層(5メートル以下)
ネジキ、カクレミノ、クサギ、トベラ、ツバキ、マサキ、モチツツジ、イヌビワ、タイミンタチバナ、ネズミモチ、イヌマキ、コバノミツバツツジ、ヒサカキ、カナメモチ
つる植物
ビナンカズラ、テイカカズラ、ツタ、キヅタ、ツルグミ、フウトウカズラ、サルトリイバラ、アケビ、ムベ、フジ
林床
ウラシマソウ、タツナミソウ、ウバユリ、チヂミザサ、ママコノシリヌグイ、ヨウシュヤマゴボウ、コシダ、ヒトツバ、ベニジダ、タチシノブ、イノモトソウ
崖地植生
ヒトツバ、ツワブキ、オニヤブソテツ、ハマボッス、イワタイゲキ、ハマウド、ハマナデシコ
環境省

(2011:12:11 09:03:04, NIKON D3100, F8.0, 1/250, 0, ISO:400, 16 mm(換算24 mm), 16.0-85 mm f/3.5-5.6, 撮影地, 潮位, 月齢:15.9, 大潮)
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201112淡路島
成ヶ島の海浜植生
成ヶ島の海浜植生は外海側と内海側で異なっています。
外海側は、潮の流れや波、風の影響を強く受けるため、礫浜と砂浜が混在して砂丘植生を形成し、ハマゴウ群落が優占して分布しています。内海側は、潮の流れや波が穏やかであることから、砂の粒径は小さく、砂泥質の塩沼湿地植生の形成が見られます。
砂丘植生
オカヒジキ、コウボウムギ、ハマボウフウ、ハマナデシコ
コウボウシバ、ハマヒルガオ、ハマゴウ、テリハノイバラ、ハマナタマメ
ハマボッス、ウバメガシ、ハマエンドウ
ハマボウ、ツルナ、ハマウド、ハマダイコン
塩沼地植生
ウラギク、ハマサジ、アイサシ
ハママツナ
ツルナ、ハホバハマアカザ、カワラヨモギ、ハマウツボ、ハマダイコン、ハマエンドウ
ハママツナ、ハマサジ
環境省

(2011:12:11 09:03:13, NIKON D3100, F8.0, 1/250, 0, ISO:400, 16 mm(換算24 mm), 16.0-85 mm f/3.5-5.6, 撮影地, 潮位, 月齢:15.9, 大潮)
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201112淡路島
成ヶ島海辺の生き物たち
成ヶ島の由良湾側には干潟が形成され、潮干狩りを楽しめます。この潮干狩りが干潟の砂泥に酸素を送る働きをして、ハクセンシオマネキをはじめ多くの海岸動物が生息するようになりました。また、干潟の先にはアマモが群生し、稚魚や多くの生物が住み着いています。
成山の北・東側の山裾は磯浜となっており、干潟とは異なる生物を観察できます。
成ヶ島周辺の海辺では、300種類以上の貝類の生息が確認されました。その中には、「兵庫県版レッドデータブック2003」に登録されている希少種も多くいます。
ハクセンシオマネキ、オサガニ、ケフサイソガニ、オウギガニ、ハサミシャコエビ、スジエビモドキ、ニホンスナモグリ、アサリ、イシダタミ、ハボウキガイ、フトヘナタリ、ウスヒザラガイ、タマキビ、コシダカガンガラ、ベッコウガサ、アカイソガニ、イソガニ、ホンヤドカリ、アメフラシ

(2011:12:11 09:03:17, NIKON D3100, F8.0, 1/250, 0, ISO:400, 16 mm(換算24 mm), 16.0-85 mm f/3.5-5.6, 撮影地, 潮位, 月齢:15.9, 大潮)
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201112淡路島
成ヶ島の漂着ゴミ
大阪湾には時計回りのゆるやかな流れが存在するため、この流れに乗って漂流したゴミが自然海岸の残る成ヶ島や向かいの友ヶ島に多く漂着・たい積し、美観を損ねるだけでなく、貴重な海浜植物や海岸動物の生育をおびやかしています。ペットボトルなどの生活ゴミが多く、主に近畿地方から、遠くは中国・四国地方からも流れてくることがわかりました。
成ヶ島の豊かな自然を守るために、国立公園成ヶ島を美しくする会の清掃活動や由良中学校の「成ヶ島クリーン作戦」が地元の人々、洲本市などの協力の下で行われていますが、漂着するゴミの量はなかなか減りません。
環境の保護のために、ゴミのポイ捨てはやめましょう。
台風直後の成ヶ島(殆ど全部が生活ゴミ)
危険なゴミ(使用済み注射器)
漂着ゴミで作ったオブジェ(京都造形芸術大学有志作)
由良中学校生徒による「成ヶ島クリーン作戦」
ボランティアによる清掃活動(成ヶ島を美しくする会)
環境省

(2011:12:11 09:03:21, NIKON D3100, F9.0, 1/320, 0, ISO:400, 16 mm(換算24 mm), 16.0-85 mm f/3.5-5.6, 撮影地, 潮位, 月齢:15.9, 大潮)
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201112淡路島
歴史で綴る成ヶ島
(1)応神天皇(日本書紀)、仁徳天皇(古事記)に詠まれた由良の門-成ヶ島
枯野を塩に焼き 其が余り琴に作りかき弾くや
由良の門の 門中の海石に触れ立つ 浸漬の木のさやさや
「枯野」とは、巨木を切り倒してつくられた丸木舟の船名で、日本最古の船名ともいわれています(日本書紀では伊豆国の貢納船と記されています)。この丸木舟はたいへん速く走ったことから「枯野」と名づけられ、この舟で毎日淡路島の清水が天皇の元へ運ばれました。やがて舟は朽ちて使えなくなりましたが、その功績を忘れないように船材を薪にして塩を焼きました。不思議なことにどうしても燃えない部分が残り、その木で琴を作ったところたいへん美しい音色は七里に響き、それは成ヶ島のヨシ原が波に揺れてさやさやとざわめくようでした。古事記伝(本居宣長)には、由良は延喜式神名帳に淡路国津名郡由良湊神社とある地、門は船の出入り口、浸漬は水に浸かるヨシなどの類をいうと記され、「由良の門」は成ヶ島古川口と推察され、その周辺の塩湿地にはヨシ原が広がっていたことでしょう。
(2)由良湾の開削
成ヶ島は昔陸続きで、正徳3年(1713年)の古地図「正徳3年改正港口之図(味地草)」によると、成山は現在の由良4丁目と、高崎は生石とつながり、由良湾は潟湖(ラグーン)でした。今は木々が生い茂る六本松周辺に旧水路、古川口がありました。紀淡海峡に面した古川口は、波が荒いうえ浅く狭かったため大型船が出入りできませんでした。17~18世紀にかけて廻船問屋が台頭し、由良においても大型船の入港が不可欠なものとなり、北側を掘り開いて深い水路を作る大工事が行われました。この開削工事は明和2年(1765年)正月17日に始められ翌年10月に完成し、「新川掘抜長八十間幅四十間深干潮にて一丈二尺」の新川口が完成しました。この工事に伴って畠一町九畝二十四歩が失われ、翌4年から入港料「帆別銭」の取り立てが始まりました。
その後、古川口が台風のたびに砂礫で埋まって使えなくなったため、寛政元年(1789年)と文政6年(1823年)の2回に分けて、生石・高崎間の水路、今川口の開削工事が行われました。文政の工事では阿波から水練の達人を派遣し潜水工事が行われました。淡路の歴史書「味地草」には「此の時鉄衣(潜水服)を用ふ」と記されています。この開削は近世の土木工事の粋を集めたほかに類を見ない工事史跡というべきものです。
(3)大阪湾の防衛
幕末、ペリー来航(1853年)後まもなく幕府は安政元年(1856年)大阪湾防衛のため様式砲台、高崎台場の築造命令を出し、徳島藩は文政元年(1861年)延べ270,860人の人夫を動員してフランス式砲台を完成しました。台場の石材6000余個は成山城の石垣が転用され、数々の珍しい刻印が刻まれています。幕末に完成したフランス式砲台は、国内ではたいへん珍しいものです。
(4)国立公園成ヶ島
明治以降第二次世界大戦が終わるまで由良は軍隊の町でした。島は要塞として機密を守るため一般人の立ち入りはできませんでした。戦後、昭和23年(1948年)に成ヶ島と名づけられ、昭和25年(1950年)4月には瀬戸内海国立公園に指定され、美しい景観から「淡路橋立」とも呼ばれるようになりました。地形、自然景観、地質、植物群落ともに兵庫県版レッドデータブックに記載され、照葉樹林の森、池、干潟、岩礁、アカウミガメが産卵する砂浜、塩沼地、アマモ場など多様な自然環境が残されて50種類以上の絶滅危惧種が生息しています。尊い自然が残る宝島といえるでしょう。
兵庫県版レッドデータブック(2003)
地形:Aランク
成ヶ島(沿岸州、ラグーン)。日本を代表する大規模かつ典型的なもの
自然景観:Bランク
海岸景観樹林。大阪湾では数少ない豊かな緑に覆われた島と自然海岸の海上の船
地質:Bランク
地層、化石、堆積構造。和泉層群灘累層(含イノセラムス化石)および砂州
植物群落:Aランク
自然植生。海浜植物群落、塩沼地植生、ウバメガシ群落
環境省